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2022.7
AQUOS R7 カメラレビュー
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AQUOS R7は2022年スマートフォンAQUOSのフラッグシップモデルとして登場しました。
前年モデルであるライカカメラ社監修のAQUOS R6の大型1インチセンサー+高性能レンズの 組み合わせで実現したデジタルカメラレベルの高画質と光学性能を継承しつつ、カメラの心臓部 であるセンサーを新開発の約4,720万画素1インチセンサーに一新した最先端のモバイルカメラシステムです。
今回は、実際に撮影された作例を交えて、AQUOS R7のカメラをレビューしていきます。
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今回の内容
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動いている被写体をAIが追尾
AI×高速AFで撮りたい瞬間を逃さない高感度モード(同色隣接画素加算/集光量優先)
撮影画像サイズ:3,968×2,976 pixel(約1,180万画素)
f/1.9 19mm ※35mm換算 (ズーム倍率:0.7)
ISO感度: 50/シャッター速度: 1/300/ホワイトバランス: オートAQUOS R7がもっとも進化したのがAF(オートフォーカス)です。センサー全画素に対応した 像面位相差AFによって、精度の高いピント合わせと高速AFを実現しています。
また、AIによる被写体検知により人や動物などの動体に対しての追尾AFにも対応しています。 カメラ設定で「追尾フォーカスをオンにすると、画面タップにより任意の被写体を追尾すること も可能です(一部カメラモードに限られます)。
被写体追尾イメージ
人物の場合、顔が正面を向いていない場合(上の写真)でも、画角内の被写体の大きさ(距離) に応じて、胴体→顔→瞳にフォーカスを合わせ追尾します(フォーカス枠表示は、顔枠のみ表示されます)。
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ひとつのカメラで超広角域から望遠域までをカバー
その答えは約4,720万画素のセンサーにズームは一般的に、レンズで焦点距離を変えて行うものですが、AQUOS R7は、レンズではなく、 センサーの配列を切り替えてズームすることで、レンズで行うズームと比べても遜色のないズームを行えます。
具体的にいうと、AQUOS R7は約4,720万画素の高画素センサーを搭載、集光量をアップするために、 4つの画素を1画素として束ねて使います。そのため、画素数は1/4(約1,180万画素)になります。 ズームをするとセンサーがズーム倍率によって、束ねていた画素を散して約4,720万画素のセンサーとして配列し直し、 センサー中央部分を使ってズームするという仕組みです。
また、歪みを抑えた高性能なF/1.9のレンズは、超広角域から望遠域にかけて、レンズの明るさを保ったままです。 これこそが1眼カメラだからこそのメリットでもあります。 もちろん、超広角の「パースペクティブ(遠近誇張効果」)や望遠ならではの歪みが少なく、 被写体間の奥行きの距離が圧縮される「圧縮効果」といった、光学的レンズ効果も得られます。
ここからは、どんな写真が撮れるのか?画質は?という点でレビューしていきます。
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瞳AFによる正確なフォーカス
解像感のある写り高感度モード(同色隣接画素加算/集光量優先)
撮影画像サイズ:3,968×2,976 pixel(約1,180万画素)
f/1.9 19mm ※35mm換算 (ズーム倍率:0.7)
ISO感度: 50/シャッター速度: 1/300/ホワイトバランス: オート画質のことで語られる「解像感」。それはフォーカスが正確であるということが大前提です。 フォーカス精度こそ、解像感を生む必須条件といえます。作例の髪の毛から目元、肌の描写、唇の艶感を見ても しっかりと解像しているのがわかります。
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豊かな階調と色彩表現
圧巻のダイナミックレンジ高感度モード (同色隣接画素加算/集光量優先)
撮影画像サイズ:3,968×2,976 pixel(約1,180万画素)
f/1.9 19mm ※35mm換算(ズーム倍率:0.7)/HDRオフ
ISO感度: 50/シャッター速度: 1/1,800/ホワイトバランス: マニュアル1画素あたりの面積は3.2μm(高感度モード時)、これはAQUOA R6の1インチセンサーのおよそ1.3倍。 AQUOS R7の新しい1インチセンサーの集光面積の大きさが分かります。
その結果、豊かな階調色調と綺麗なグラデーション、そしてディティールをしっかりと表現できる「余裕」が 感じられる画作りが可能になっています。
また、AQUOS R7では、 カメラのカバーガラス内側に施されたナノレベルの低反射コーティングによってフレアやゴーストが低減されています。
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1インチセンサーならではの光学ぼけ
その効果はクローズアップで最大限に高精細モード (配列変換処理/高解像度)
撮影画像サイズ:3,968×2,976 pixel(約1,180万画素)
f/1.9 約37mm程度 ※35mm換算(ズーム倍率:1.6)
ISO感度: 50/シャッター速度: 1/200/ホワイトバランス: オート大きな1インチセンサーとF/1.9の明るいレンズの組み合わせは、スマホとは思えない 大きな光学ぼけと浅い被写界深度が魅力です。撮影最短距離がAQUOS R6と比べて3cm程度短くなったこともあり、 光学ぼけの効果は若干大きくなったように感じます。
上の作例のように被写体に近づき、ズーム倍率を1.6〜2.0にしてクローズアップして撮影すれば、 大きなぼけ味とともに浅い被写界深度の写真を撮ることができます。
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歪みや偽色、収差を抑えた
シャープで余裕のある描写高感度モード(同色隣接画素加算/集光量優先)
撮影画像サイズ:3,968×2,976 pixel(約1,180万画素)
f/1.9 19mm ※35mm換算(ズーム倍率:0.7)
ISO感度: 50/シャッター速度: 1/2,200/ホワイトバランス: オート超広角19mm(35mm換算)のズミクロンレンズを搭載しています。非球面レンズを含む7枚のこのレンズは、 しっかりと歪みを抑制しています。多くのスマートフォンの超広角カメラは、 魚眼レンズのように樽型に変形する歪みを電子的に補正していますが、このレンズは光学性能だけで歪みを抑えています。
その描写を見てもクリアで鮮明です。高画素センサーに多い偽色やリンギング(輪郭強調による不要な輪郭)が見られません。 また、HDRによる過度な明るさ強調もないため、明暗のバランスもとても自然です。
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10bit RAW撮影、最長30秒の露光時間
本格的なマニュアル撮影高感度モード (同色隣接画素加算/集光量優先)
撮影画像サイズ:3,968×2,976 pixel(約1,180万画素)
f/1.9 19mm ※35mm換算(ズーム倍率:0.7)
ISO感度: 50/シャッター速度: 4sec./ホワイトバランス: 4,700K/EV: ±0/彩度: +1/コントラスト: +1/明瞭度: +2
使用機材: 三脚(ブレ防止/スマホ固定用) 取り付けアクセサリー: ND フィルター(減光用)インターフェイスも一新され、より使いやすくなったマニュアル撮影(マニュアル写真モード)にも対応しています。 設定パラメータにEVも追加され、よりデジタルカメラライクな使い勝手で撮影できます。 シャッタースピードが最長30秒まで設定出来るようになったのも風景写真を撮る場合には魅力的です。
マニュアル撮影で設定できる項目は以下の通りです。
撮影基本設定 シャッタースピード/ISO感度/ホワイトバランス/EV 画作りや画質の調節項目 彩度/コントラスト/明瞭度 これらの設定項目を「お気に入り」に登録しておくことが可能なため、 お気に入りの設定内容をすぐに使うことができます。
10bit RAWデータ撮影では、JPEGとRAWデータの2種類が保存されます。JPEGは、彩度やコントラスト、 明瞭度、ズームを含めた設定がすべて反映された状態で保存されますが、 RAWデータでは露出とホワイトバランス以外の設定については反映されません。 また、ズーム倍率が0.7〜1.5までは、0.7倍の画角、1.6倍以上の撮影では、1.6倍の画角のRAWデータが保存されます。
また、撮影画面には、撮影を補助する水準器、白飛び黒潰れ警告表示、 フォーカスピーキング(マニュアルフォーカス時)、ヒストグラムを表示できます。 普段デジタルカメラを使っている人にとっては馴染みのある表示機能が揃っています。
AQUOS R7のカメラの感想をひと言でいえば、そのカメラらしい外観や撮れる写真も含めて、 より本格的なカメラとして進化したといえるでしょう。
また、カメラにとってディスプレイは撮影時のファインダーとして、そして撮った写真のビューアーとしても 非常に重要になります。撮影という点では、ピーク輝度2,000nits.、 コントラスト比2000万:1の明るく高精細なディスプレイは、ファインダーとして心強い組み合わせです。 日中の明るい場所での撮影時にも見やすいファインダーは、撮影意欲を掻き立ててくれます。
ぜひ皆さんも使ってみてはいかがでしょうか。
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- 黒田 智之 くろだ ともゆき
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東京生まれ。公益社団法人 日本写真協会会員。
アートディレクター、フォトグラファーを主として音楽、映像、出版、広告などで活動。近年では、スマホ写真を中心に写真の撮影・プリントに関する書籍の執筆やセミナー、ワークショップ等の講師も務める。近著には『「いいね!」を増やす スマホ写真の撮影レシピ』(シーアンドアール研究所刊)などがある。